今日は、メーカー某社で、問題解決会議のファシリテーション。
このお客様とは、かれこれ1年以上のお付き合いになる。
私のファシリテーションスキルにクレームをつけられたり、瑣末な事務処理でトラブルがあったりしたが、かわいがっていただいている。
おかげで私も勉強になっている。ありがたいお客様である。
さて、今日は
・ブレストによる、課題の洗い出し
・論点の整理と絞込み
・内容の深堀
を、午後から5時間ほどかけて行う。
多くの関係者が集まり、緊急ではないが重要なテーマについて、本音で話し合う、めったにないいい機会であると思う。
こうした会議の必要性は、多くの会社で認識されているものの、実行できている会社は実に少ない。
だが、5年経てば、こつこつと実行できる組織と、そうでないものの間には大きな差がついていることだろう。
さて、この会議に出席して、毎回考えるのは、マトリクス組織の運営の難しさである。
多くの製造業・ITサービス業における商品開発業務部隊は、マトリクス組織になっている。
具体的には、モノ(クルマやバイクのモデル、情報システム、クスリなど)を、実際に作る部隊である「プロジェクト」と、そこに専門家人材を派遣する「ライン」によって、組織が運営されている。
通常、オフィシャルな組織図に描かれるのは「ライン」であるが、実際の業務は「プロジェクト」ベースで行われている。
理想系は、「ライン」が専門領域の品質担保とリソースマネジメント(スタッフィング、人材育成など)を行い、プロジェクトの成功に貢献することであるが、実態はなかなかそうならない。「ライン」が形骸化しているか、あるいは「邪魔」になっていることが多い。
その最大の要因は、ライン(特にマネジャー)が十分な権限をもてないからである。(持つべきであるが、実際はもてない、という意味)
最大の理由は、会社の実績がプロジェクトについているから。カネに対する責任、スピード感などを考えると、プロジェクトの都合を優先せざるを得ない。
また、メンバーはプロジェクト業務に忙しく、ラインに対してプロジェクトの情報を十分に伝える余裕がない。十分な情報がないので、ラインマネジャーは適切な判断が難しい。
私が前に居た会社もそうだった。
僕は、どちらかというとラインに対する想いが強かったのだが、何事もプロジェクトが優先である。研修や情報交換会を実施しても、いつも参加者が少なかった。
人材育成の観点で戦略的に人をアサインしようにも、タイミングの問題があり、ラインとして育てたい人が、専門領域とほとんど関係ないプロジェクトに配属される。
ずっとこれを問題視していたのだけれど、あるときから、「実態としての」ラインの位置づけは、「牽制力の埋め込み」にあるのかなと、捉え始めた。
カネも力もあるので、放っておくとプロジェクトが好きなように走ってしまう。
それを阻止する仕組みが、ラインの存在だ。
だとすれば、プロジェクトにとってラインは「うざい」のはある意味当然だ。
それを、みんながちゃんと認識してマトリックス組織を運営すると、案外うまくいくかもしれない。
もちろん、ラインの動きは「お手盛り」じゃまずいですが。
知識工房 山崎