本書で扱ったテーマについて、より深く学びたい方のために、参考文献をいくつかご紹介します。
会議の質を上げるためには、会議の形式面はもちろん重要ですが、そのキモは議論により質の高いアウトプットを出すことです。そのため、推進役はもちろん、会議メンバー一人ひとりが発想法や論理思考方など、基礎的な思考技術を習得していることが大前提です。
本書は会議の教科書なので、この部分は簡単にしか触れていませんが、これからご紹介する文献から多くの学びが得られることでしょう。
 
 
95年に日本語版の初版が出て以来、考え、書くことが仕事の中心を占めるビジネスパーソンに読まれ続けてきた本。
本書で紹介したピラミッドの原則は、この本からの学びがベースになっています。
筆者も、コンサルタント駆け出しのころ必死になって読んだものです。小学校から大学まで16年間教育を受けてきたわけですが、このように論理的に考える、書くことを一度も体系的に学ばなかったことを、非常に残念に思いました。
今書店に並んでいる関連書籍のほとんどは、この本から多くのヒントを得ている、言っても過言ではありません。一冊だけ読むなら、この本です。
 


問題解決プロフェッショナル「思考と技術」

戦略コンサルティングファーム出身のコンサルタントが、「論理的に考える」プロセスを、順を追って説明している本。ダイエットや一般的なビジネス課題をテーマとして扱っており、わかりやすさという点で、群を抜いています。

議論のレッスン

 

早稲田大学の心理学を専門とする教授による本。
「議論」とはそもそも何であり、その議論をわかりやすくするためには、どんな技術が必要か」が、イギリスの研究者トゥールミンのモデルを用いて解説されています。
主張、根拠、論拠、反証、裏づけ、など、一見難しい言葉ですが、この五つを押さえておけば、「議論」というものの理解が深まります。
政治を題材にした事例が多い点と、学際的で多少冗長な部分はありますが、ピラミッド原則を別の視点から補強するには、格好の本です。


企業参謀―戦略的思考とはなにか

ビジネスマンが、具体的な仕事上の問題解決を行うのに必要な考え方が体系的に記されている。私は、戦略を学習するためというよりは、ビジネス問題を解決するための発想を学ぶ本として位置づけている。学生時代に、32歳、コンサルティング経験1年でこれだけの内容を書いていることに、感動した記憶がある。昔は、プレジデント社から「正・続」の2冊で出ていたが、今は別の出版社から1冊に焼きなおされている。


「超」発想法

古今東西の発想法を研究した上で、「発想とは模倣であり、既存のものの組み合わせである。
発想力には、知識の詰め込みが不可欠」と、極めて本質的な主張をする本だ。
野口教授の著作全般に言えることだが、構成が抜群に論理的で、読者の理解プロセスをたくみにフォローしている。1冊だけ読みたい方には、間違いなくこれをお勧めする。


会議が絶対うまくいく法

さまざまな意見を、会議の目的に沿って纏め上げる考え方と手法を示した本。アメリカで「会議のバイブル」として読み継がれてきたロングセラーだそう。
事例が豊富で非常に読みやすい。チェックリストやトラブル対応なども参考になる。


会議革命

ご存知、斎藤孝先生の会議に関する本。意思決定の場というよりは、アイデア創出や、コミュニケーション促進の場として、会議を捉えた場合に有用だと思われる。
マッピングコミュニケーションは、期せずして私も10年以上使っている。
読み物としても面白い。

【おまけ】

考える技術・書く技術 ワークブック〈上〉
考える技術・書く技術 ワークブック〈下〉
『考える技術・書く技術』のワークブックです。じっくり取り組むと、効果絶大?


考具―考えるための道具、持っていますか?

アイデアを出すための具体的なツールが豊富に紹介されている。
身近なテーマを扱い、「ですます」調で書かれているため、親しみやすい。
本のタイトルとデザインも秀逸だ。
「発想法」を語る著者なら、自著をベストセラーにしないと嘘だと思うのだが、加藤氏はこれをやってのけた。すごい。


アイデアのつくり方

アイデア作りに関する書籍の古典。
本は厚さ1cmくらいで、活字も大きいので、すぐ読める。
コンセプト中心で、具体性に乏しいのが難点だが、読んだことが無いと、なんとなく恥ずかしい。


発想法―創造性開発のために

ある年代以上の方にはお馴染みの「KJ法」を開発した研究者による本。
学者風の構成と文体で、ビジネスマンにとっては読むのに多少骨が折れるかもしれないが、発想について語るのであれば、押えておきたい一冊である。


すごい会議−短期間で会社が劇的に変わる!

なんだか、「すごい」タイトルであるが、内容は組織変革のステップを、一連の会議のなかで着実に進めることで、参加者へ行動変革の気づきを促す手法をまとめたもの。
実際に使えるシートが閉じこまれており、有用性は高いと思う。
ただ、本の半分が著者の社会人経験の苦労話になっているあたり、好き嫌いが分かれるかもしれない。(個人的には、本論の信頼性を高めるために有効な前置きだと感じているが)


ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル

3年ほど前ベストセラーになった本。やはりミントの手法を踏襲しているが、ミントの本に比べて、例題が身近で読みやすい。この3冊のなかで、一番早く読める。


なぜ会社は変われないのか―危機突破の風土改革ドラマ

方法論を方法論として示すのではなく、小説仕立てで会社が変わるプロセスを書くなかに、手法や考え方を織り込んでいる点が、よくあるビジネス書っぽくなくてよい。
内容にしみじみ感があり、ベストセラーになったのも頷ける。

日経ITプロフェッショナル2005年6月号・「ファシリテーションの基本を知る」
僭越ながら、私の記事の紹介。
SEの方々が進捗報告や要件定義などの場において必要なファシリテーション技術に関して、基本的な部分を紹介した。特に、根回しのポイント、アジェンダの作り方、板書の方法、などに力を入れて書いた。書店で買えないのが残念だが、上記リンク先から申し込める。SEの方なら、周りで購読している方も多いと思うので、声を掛けてみるとすぐに手に入るかもしれない。

以上です。

知識工房 山崎